『ひかるゆめ』コメントです。


こころは血を流して花園のなかにいる。

欠けること、失うこと、遅れることの豊穣さ。

ざわざわと大きくて、きらきらと陶酔させるそれらが、たったひとつの身体に、すべて詰まっていることの賢明さに憧れ、まっすぐな声に打たれる。

迷い、誰にも打ちあけられない心をもっていたようなとき、それでも苦しみぬくべきだとしか思えない確信のなかにいて、眼に映るものがどうしても澄んでくるようなとき、きづいたら、穂高さんという歌手が横にいて、ひかりのようにうたっていた。

そのとき、穂高さんがどんなひとなのか、初めてわかった。数年前から知り合いなのに。そしてアルバムを聴き、数度きりだけど喋って、何にもとらわれることなく、彼女の歌にも、彼女にも向きあうほど、素敵で豊かなものが、私たちの間からみえてくるのだと知った。そのたびに、どんな大きなものを、彼女からもらっているんだろう。穂高さんはいつも言う「私は、本気のひとが好きなのです」。

世界を優しく視るひとの口からこぼれおちる無数の意図が歴史をしずかにたしかに織っている。

それはときに憂鬱な過程をもはらむのかもしれないけれど、運良くも、穂高さんは青色の似合う背の高い女の形をしている

                
                       三村京子