5月29日、夜、東京

菊田尚さん

昨夜、菊田尚さんライブ、無事終了致しました。
ほんとうに、素晴らしいライブでした。


菊田さんのうた、この31回の中で、一番声が大きかったと思います。
菊田さん自体の声がもともと大きいというわけではなく、
菊田さんが「声の限りにうたう」から。
持っているエネルギーを全部残らず、その瞬間に放出するようなうた。


この企画ライブを何度もやった中ではじめて、
高円寺書林という場所が、狭すぎるように感じました。
菊田さん自体が窮屈そうというわけではなくて、
菊田さんのエネルギーのスパークの激しさと声の大きさに、
書林の、箱の方が、驚いてまるで息を止めていたような気がしました。
彼にはやっぱりライブハウスが一番似合うんだな、そう思いました。


菊田さんが、全身でうたう。叫ぶようにうたう。
それだけで鳥肌がたったり、涙がにじんでしまうのはなんでなんだろう。
感動した、というより、「戦慄を覚えた」、といったほうがしっくり来るようです。


声をだすって凄いことなんですね。
ステージの上の人間が本気で声を発するときって、
「きみ」とかの一言にどれだけのエネルギーが込められてるんだろう。
赤ちゃんが全身で泣く。
そういうことが、成長の過程で、なくなって、大人になって、
全身に自分の想いを込めて声を出すなんてことはほとんどなくなる。
でもうたをうたうひとは、おなじエネルギー使うのではないかと、昨日思いました。


そして、「言霊」のことを想いました。
うたにいちばん必要なもの。
どれだけその人が発してる言葉と、
そのひとの内面にずれがないか、みたいなもので、
言葉の強さが変わると思う。
うそかほんとかってことじゃなくて、
うそでもいいんです。
ずれがなければ。


そして菊田さんのうたは、菊田さんの胸から直通して出てくるから、
どんって、空気砲で撃ち抜かれたみたいに、こっちの胸に直通なんです。
頭に届く前に、からだに届くから、鳥肌が立つのかな。
感動してるって自分で認識する前に、涙腺が緩んでいたりする。
不思議だけど、納得がいく。
人間もまだ野生のちからはたくさん残っているから、
目の前の生のエネルギーに、反応するのは当然なんですね。


わたしにとって、本当に嬉しかったこともひとつ。
私の曲、「いつか」のカバーをしてくださったこと。
直視できなかったんです。
涙腺がゆるみすぎたのもあったし、なんでか、見れなかったんです。
こわかったのかもしれない。
下を向いて、顔をあげられずに、眼をつむって聴いていました。
自分でうたってるのではわからない、言葉が一語一語突き刺さった。
メロディーには覚えがあるのに、初めて聴いた言葉みたいだった。
苦しかったし嬉しかった。


菊田さんがうたい終わったあと、
「いつか」をうたっている菊田さんを一度も直視しなかったことを、
とっても後悔しました。
きっと後にも先にも今一度だけ。
しっかり眼をあけて見ておきたかった。
菊田さんが「いつか」をうたってくれているときの顔を。
ずっと覚えておきたかった。
こうやって一番大事なところで自分は眼をあけていられないで、
これからも一番大事な瞬間を見落としてしまうんだろう、そう思いました。
だけど、今も耳に残っている、菊田さんの「いつか」は忘れないと思います。
jojo広重さん、コモリキヨタカくん、山口史章さんが、
カバーしてくれた「空に」も同様です。)


そして久しぶりに聴いた小沢健二の「天使たちのシーン」、
自分にとってものすごく大事な曲だから、
本当に長いあの曲を菊田さんがうたっている時間、
ずっとずっとこころの奥のふかいところを漂っていました。


そして菊田さんの曲、聴いてると、
今までにこの人におしよせてきた想いのひとつひとつ、
どれだけのことをかんじてきたのかなんて想像つかない、
そして、今現在どれだけのことを感じ、どんな想いが胸をうずまいているのか、
そのことも、わたしには想像つかない、
だけどそのすべてが、今のうたになっているんだ、と想わずにはいられなかった。


菊田さんのボーカルのバンド「sorrys!」のアルバム、
「そう、今すぐ そう、全部!」そのタイトルの意味が、
自分なりにわかったような気がした、そんな夜でした。


最後にわたしの一番好きなsorrys!の曲の詞を載せさせていただきますね。


          ***



『ジャンボ』


僕が昨日僕だった季節を笑い飛ばすのなら
僕は悲しむだろう 僕はまだ僕を知らないからさ


いつまででも昨日のままで
うつむいて見つけそびれてしまえよ


一秒でも 勘違いでも オレを愛してみろよ


オレたち ひとつも
なにも残せやしない


そんなことはわかってるよ
それが生きる意味だろう


自分を恋人を友達を 裏切って泣いた
だけど僕は僕そのままだった
君を愛してる僕だった


   
              ***



菊田さん、集まっていただいたお客様、
素晴らしい夜をほんとうにありがとう。
本当に、感謝。