第29夜 三角みづ紀さん


*第29夜 三角みづ紀+瀬戸尚幸 『中間』
5/11(水)19時開場・20時開演
入場料500円+ドリンク


*プロフィール
三角みづ紀(みすみみづき)
詩人。1981年鹿児島生まれ。
第42回現代詩手帖賞受賞。
処女詩集「オウバアキル」で第10回中原中也賞受賞。
他に歴程新鋭賞、南日本文学賞受賞。
近著に「骨、家へかえる」(講談社)、第四詩集「はこいり」(思潮社)等。
2008年秋より朗読やボイス、歌のステージをはじめ、
2010年に三角みづ紀ユニット初アルバム「悪いことしたでしょうか」をペルメージレコードより発表。
同年12月には遠藤ミチロウ還暦記念トリビュートアルバム「青鬼赤鬼」に参加。
ジャンルを超え、あらゆる表現を「現代詩」として発信し続けている。
http://misumimizuki.com/


【メッセージ】
むつかしいことが苦手です。
かんたんな仕組みをむつかしくすることが苦手です。
そこにあるだけで満ち足りるように、意識せずとも関わって、
そこにあるだけとしていつもと変わらないまま自然に変化したまま、
いまのわたしとしての「中間」の夜です。
「中間」はわたしのユニットでフレットレスベースを弾いている瀬戸尚幸が、
アコースティックベースを用いる、
それだけで充満するような一時間のデュオライブです。
その場所に、います。
その場所に、いるということがとても大切です。


               
               ***



穂高より
今回は、私がまだ三角さんとは面識がありませんでしたが、歌人雪舟えまさんに推薦していただき、出演していただくことが決定しました。
三角さんの出演によって、また何かが広がる感じがしています。
私もはじめてみる三角みづ紀さんのステージ、とても楽しみでなりません。
今回は雪舟えまさんに紹介文を書いていただきました。



雪舟さんより紹介
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みづ紀さんのこと

詩人、三角みづ紀といえば。
処女詩集「オウバアキル」で中原中也賞、ほかにも歴程新鋭賞、
南日本文学賞を受賞し、「骨、家へかえる」(講談社)で
小説家としてもデビューを果たす、などなど
とてもきらきらした経歴をお持ちです。


が、ここにはそうした オフィシャルなことより
わたしから見た彼女のことを 少し書いてみたいです。


みづ紀さんとは2年前に韓国・済州島で開催された
世界デルフィック大会という国際芸術祭の
ポエトリー・リーディング部門で、日本からの参加メンバーとして
出会いました。


そこで初めてみづ紀さんのステージをみて
独自の朗読スタイルにびっくりしたんです。
海外の詩人たちも息をのんでいたのがわかりました。


彼女の、客席に対して横を向き、
腰を曲げて読むスタイル。
アフリカの詩人たちがよろこんで真似して
人気者になっていました。
わたしも、朗読なのに(?) 面白い! って
ほんとに驚いて、嬉しかった。


みづ紀さんの朗読のやりかたには
状況を最大限に活かすための
三次元的な目配せを感じました。
韓国の会場は 一人でやるには広々としていたのですが
その空間はうつろではなくて、意識や意図で満たされた
創出されたものとして受けとめられました。


目配せがどうの、というより
持って生まれた熱量がもう、圧倒てきなのかもしれません。


それは、帰国後に
彼女が歌手・音楽家であり
映像作家でもあり、デザインにも腕をふるう
ほんとうに多彩な人であると知ってゆく中で、
わたしも一緒に企画をしたりして、
その熱さを 間近で見ることになるのでした。


この熱が、多くの人をひきつけて
彼女を新しい世界にどんどん連れ出してゆき、
彼女も多くの人を連れてゆく。


穂高さんから このワンマンライブの企画を
教えてもらったとき
ああ、この企画で
みづ紀さんの声が 聴けたらなあって
ゆらゆらと思っていました。
穂高さんに相談したら、快諾して下さって
実現することに。
ありがとうございます。わたしと、わたしの信頼する人が
きれいな場所に 入れてもらえた気がしました。


今回は、ベースの瀬戸尚幸さんとのデュオで
歌がメインになるのでしょうか。
何が聴けるかほんとうに楽しみ。


みづ紀さんの詩を一篇、ご紹介します。



しゃくやくの花


安物のベッドが
壊れてしまいそうな
セックスの夜
むかしのこいびとのもんだい
を吐き出したおとこは
わたしに
プロポーズした


わたしは
とても拙いから
ことばは返せずに
おとこを
抱きしめて
きすをした


わたしは
とても拙いけど
これから
を強く感じたから
煙草を吸うこと

やめました


朝という概念がめばえたら
駅ビルの花屋

一本三百五十円の
しゃくやくを二本
買います
おとこが帰ってから
それは
固いつぼみを緩め
夜中には
咲きこぼれます
とても死ぬ きれいね
とても死ぬ きれいね


わたしたちは
とても拙いから
時々わからなくなるけど
拙いなりに
生きること
を選んだのだ


次に桜が唄う頃
わたしは
よめになるのだ


しゃくやくの花
とても死ぬ きれいね



三角みづ紀『カナシヤル』所収

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ああこのような詩を書く方が明日書林にいらっしゃるのだな。
どきどきと、不思議な気持ちです。


雪舟さん、素敵な紹介文、ありがとうございました。             
明日はどんなよるになるのでしょう、
ほんとうに楽しみです。
わたしのように初めて見る方々も気軽におこしください。
一緒にみづ紀さんの世界へ。
気がむいたら書林にぜひお越しください。