7月の終わりにアイザワ君という人が死んで
そのひとは私が、過去に、大好きだった人だった。


葬儀が終わってずっと、
何日も何日もアイザワ君と過ごした日々のことを
いっぱい想いだしていっぱいいっぱい考えた


ある朝突然正確に感じたことがあって
間違えてるかもしれないけど
そのことをここに書きます。


何日もどう受け取っていいかわからずに、悶々としていたとき、
友達が、アル中って自殺みたいなものなんじゃないかって、
彼の追いつめられた心を想うとやりきれない、ってメールをくれて、
だけど私はその言葉にすごく違和感があって、
それからその違和感をずっと探ってた。


本人もゆっくり自殺してるみたいなもんだって
生きてるとき言ったことがあったし、
周りの皆もさんざんお酒を止めて、
お酒飲み続けたら死ぬよ、って何度も言ったけど、
最後までお酒をやめなかった。


アイザワ君はなんでお酒やめなかったのかなって
私も含めて周りでやめさせることがなんで出来なかったのかなって
どんどん悪くなっていってる体を感じながら、
死ぬはのこわくなかったんだろうかって
ずっと考え続けてた


もちろん死ぬのがこわくなかったわけなんかない、
でもなんだかアイザワ君は追い詰められてはなかったような気がするんだ、


私が想いだす限り、そういう感じじゃなかった。


うん、追いつめられた心がお酒を欲していた訳じゃない、
お酒は彼をとても幸せにしてたんだよ、
それだけは間違えちゃいけない気がする。


もし、ほんとうに、彼が追いつめられていたとするなら、
理想と現実とか、軋轢とか、悲しいこととか、
きっと本人にもわからないような沢山の要因があって、
そしてそれは誰もが個々自分の心の中にもってることで。
きっと程度の差はあっても持っていない人なんて居なくて。
みんな色んな方法でそこと折り合っていくんだろうけど、
アイザワ君がそれに対抗する方法が、
生きることをただただめいっぱい楽しむということだったんじゃないかな


その「楽しい」が彼にとっては音楽で、人で、お酒で。
それだけだったんじゃないかな。


あの人は自分がもう長くないことをどこかでわかってたし、
死をゆっくり待っていて、どこか幸せそうですらあった。


なんか達観してて悲壮感がなかったなぁ。


酒場に居るときのほんとうに幸せそうな顔を思い出す。
夕方の夏の空気、お酒を本当に楽しそうに飲んでた。
そして他の席でお酒を飲んでいる楽しそうな知らない人々を
眺めてはまた幸せそうにしていた。
知らない人にもすぐ話しかけて仲良くなって。
そういうことのすべてを幸せそうにしてた。


そして、思いがけなく好きな曲がかかったときは
眼をつぶってものすごく本当に本当に幸せそうに音の中に入り込んで
音のすべてをひとつも聴き漏らさないような様子でじっと聴いていたよ。
そのときもうアイザワ君は隣に居るのにここに居なくて
音楽の世界の中にいってしまって誰にも連れ戻すことは出来ない、
その感じが、死の世界にも少しずつ誘われていっても仕方ないような感じだったんだ。
彼の魂は、どうやったって半分以上もうここに居なくて
私がどんなに泣いても怒っても説得しても、
無理矢理とどまらせておけるようなものではなかったように想える。
曲が終わってぱっと現実に戻ってきてとっても幸せそうに、
ほんとに大げさなくらい、眼をうるうると輝かせて、
今、この音楽が聴けて、ここに居れてほんとうに幸せだって、
全身で伝えてきて、その純粋さはこわいくらいほんとうだった。
あんなになんでもないような場面で、あんなに幸せそうにする人、
そんなにたくさんはいない。


そんなことを、想いだしながら彼の人生を想ったら、
全然五分五分なんだ、不幸とか、幸せとか、わかんないけど。


とにかくずっと、ずっと考えていたけど、
無意識でもなんでもいいが、自殺ではないなぁと思う、
寿命を全うしたんだと思う。


死顔はめちゃくちゃ穏やかで笑ってるみたいだったよ。



彼は自分の生き方を最後まで曲げなかった。
それが彼にとって彼の周りにとってどういう意味を持つのかは
ことごとく責任とらずに死んでいった。
でも生きてるときから誰にも期待させずに
自由を貫いてたから誰も裏切ってないんだよ。


短かったけど辛さよりは楽しさの方が多い人生だったんじゃないかと思う



私はいろんなこと教えられた、
アイザワ君と見た世界はアイザワ君が居ないともう見れない。
凄い世界だった。
美しさも汚れも凄くて気持ち悪いくらい生きてる世界だった。
生命が凄かった。


もちろん暗い側面もなかったことには出来ないけれど
それよりもっと、なんかあるんだ。あったんだ。
アイザワ君という人の人生には。


反面教師としても史上最強だった。
逢えて、一緒に過ごせてほんとうに良かった。


ここ数日毎日のように夢に見る
幽霊が出てくるんじゃなくて
生きてるときの夢。


死んで美化してしまいそうなこちらの悪い癖を
さんざん壊しにかかってくるような
あの最高に面倒くさい部分を夢の中でも振りかざしてくる。


その夢みても全然うれしくない。(笑)
もっと天使みたいになってくれたら今のあいざわ君と話したい。
死んだらどんな感じか聞いてみたい。


でもきっとアイザワ君もう現世に興味ないかもなぁ。
私のことなんて忘れてるだろう。今が楽しすぎてさ。


私も少しずつ忘れていくのかな、
嫌だけど、
どんどん元気になっていくし
時間は流れていくから
どうしても止められない。


どんなに死んだ人のことをもっと考えたくても
他の生きてる中の嫌なことがたくさんあったり
楽しいことがたくさんあったりして


だんだんと思い出になっていく。


なにが変わったかって
今あの人はどこにも居ないってことだけ。
この世界には居ないってことだけ。


だからこっちはただ生きるだけだよ。


でもやっぱり忘れたくないよ。
ずっと。



夏はあっという間ですね。
今年の夏を、ただめいっぱい感じて、
今年だけの思い出がまた残ってゆくよ。


過去があって
想い出を残してくれてほんとうによかった。
美化したくないけどだけどやっぱり
死んだ人との想い出は綺麗すぎるよ。


ただ感謝して。


また書きます。


穂高